日本経済新聞
 大手予備校、東進ハイスクールを運営するナガセは全国の小学生向け学習塾の組織化に乗り出す。昨年買収した老舗学習塾、四谷大塚(東京・中野)の指導法を活用。四谷大塚のテキストの使用やテストへの参加ができる加盟塾を募集する。老舗のブランドを活用することで、少子化が進む中でも加盟校全体として生徒を確保する。初年度200塾、300教室程度の参加を見込む。

 加盟塾を「四谷大塚NET(ネット)」として組織化する。首都圏の名門中学受験に強い四谷大塚は「予習シリーズ」などの有名テキストや、生徒の理解度を確認する週例・月例テストで定評がある。加盟塾はテキストに基づく授業ができ、定例テストにも参加できる。難易度の高いコースから始められない生徒向けに基礎力を重視した新コースも設置する。

2006/10/12 日経産業新聞

なぜ四谷大塚を傘下に収めたのか。

「長年、四谷大塚は意中の企業だった。教育産業は、実績がなければどんな理念を打ち出しても受け入れられない。四谷大塚には積み上げた抜群のブランド力がある」
「ナガセは講義の映像を全国のフランチャイズ校などに配信、四谷大塚も教材や試験を提携塾に販売している。両社はいずれも教育コンテンツ(情報の内容)の開発が事業の主体で業態が似ている。従業員同士も共感し合えるはずだ」

買収交渉の経緯は。

「5月に金融機関を通じて当社から持ちかけた。四谷大塚の鈴木靖夫会長(当時社長)は65歳と高齢で、事業の継承相手を模索していた」

両社の融合をどう進めるのか。

四谷大塚には1?2年は現在の事業を継続してもらう。ナガセの事業にどう組み込むかは今後検討する。四谷大塚の授業の映像をナガセの衛星配信システムに乗せ、提携先の塾に配信することも考えられる」
四谷大塚の教室を首都圏で拡大するとともに地方展開も検討する。四谷大塚は開発した教材を提携塾に販売し、自らの教室展開は十五校にとどめてきた。ただ、国私立中学校の受験人気を考えると、15校という教室数は少ない。四谷大塚が開発した試験の地方開催も需要が見込める」

四谷大塚の教室展開を進めると、提携塾と競合するのでは。

四谷大塚がこれまで進めてきた手法をすべて踏襲する必要はない。新たな教室展開や新設する場所の選定は、事業性を適切に判断して決める。その結果、提携塾が教材の売買契約を打ち切っても仕方ない」

買収はナガセの財務を圧迫しないか。

「ナガセの2006年3月期の営業キャッシュフローは約32億円。58億円の買収資金は全額借入金で賄うが、キャッシュフローからみてリスクが高まるとは思えない。買収に伴うのれん代は約20億円で、5年間で償却する」

「小学生から社会人まで幅広い層を網羅する教育体制を整える。足りない分野は今後も買収などを活用して追加する。三年後には経常利益百億円(06年3月期は23億円)を目指す」


2006/08/19  大学受験予備校「東進ハイスクール」などを運営するナガセは18日、中学受験向け進学塾の四谷大塚(東京)の全株式を取得し、完全子会社化すると発表した。少子化の進展に伴い、高校卒業者が大学入学定員と同じになる「大学全入時代」の到来を見据え、中学受験分野を強化する。
 
ナガセは、四谷大塚の株式を鈴木靖夫同社社長らから10月2日付で取得する。子会社化後も中学受験でブランド力のある「四谷大塚」の塾名は変えず、現在首都圏にある15校すべてを残す方針。


2006/10/12 日経産業新聞
受験シーズン本番を控え、秋めくと同時に空気が張り詰める教育産業。予備校や学習塾では受験対策が本格化しているが、例年と違うのが経営者の緊張感がいつも以上に高いこと。少子化を背景に再編のうねりが押し寄せているためだ。受験生減少に悩む予備校などが、受験競争の低年齢化で収益環境が好転する小学生向け学習塾の買収に動き出した。

10月2日、足並みをそろえて成長してきた教育産業の曲がり角を象徴する出来事があった。大手予備校「東進ハイスクール」を運営するジャスダック上場のナガセが、中学受験で定評のある老舗学習塾の四谷大塚(東京・中野)を買収した。ナガセは小学生向けから大学受験向けまで幅広い年代の子供を囲い込み、収益源を多様化する。

ナガセが四谷大塚買収に動いた背景にあるのは、少子化に伴う大学受験生減少への危機感だ。これは多くの予備校に共通する。「地盤沈下の続く予備校だけではやっていけない」(首都圏の予備校経営者)

大学の志願者総数と合格者総数が並ぶ「全入時代」が2007年度に訪れることも予備校経営には重しになる。数字の上では誰でも大学に入れるわけで、浪人生の減少が見込まれるからだ。現役高校生にも「予備校に通わなくても」という機運が広がりつつある。さらに、生徒を囲い込むため推薦入試の実施時期を前倒しする大学も増え、予備校の平均在籍期間は短くなる一方という。

予備校が悲鳴をあげる反面、小学生向け学習塾の事情は全く異なる。国私立の有名中学校の人気が高まり、受験対策教室は活況だ。要因の一つは02年に導入されたいわゆる「ゆとり教育」。学力低下を懸念する保護者が子供をこぞって塾に通わせ始めた。

早稲田アカデミーや市進などが06年度に経常最高益の更新を見込むなど学習塾大手の業績は軒並み好調だ。予備校運営が主体の企業にとって、中学受験市場は是が非でも手に入れたい分野。小学生のころから生徒を囲い込めれば、大学合格までの長い期間通ってもらうことができるとみる。

学習塾の収益性には、予備校以外の教育産業や買収ファンドも注目する。教育系出版社の学習研究社は小学生らを対象にした学習塾「桐杏学園」を運営するアンセス(東京・豊島)を買収。ある大手ファンドの運用担当者は「業績が安定しないネット企業などに比べ堅実な学習塾銘柄はむしろ新鮮」と話し、「十億円程度を目安に学習塾への投資を検討している」と明かす。

全国の学習塾は04年で約5万教室。教室を展開する地域での知名度は高いが、上場企業でも百億円以下で買収できる学習塾が多いことも再編機運が高まる理由だ。

もっとも、小学生向けもこのまま少子化が進めばいずれ需要が頭打ちになるわけで、先行きの環境は楽観できない。予備校や学習塾が生き残っていくには、講義内容で他社との違いを明確に打ち出すなど魅力を高めて囲い込みを図ることが欠かせない。

 

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